国際相続における問題点
国境を超えた人・モノの移動によって生ずる国際相続は、国内にとどまる相続にはない問題点があります。そして、これこそが国際相続の特徴でもあります。
国際相続の場合、問題となるのはどの国の法律に準拠して相続を行うべきか、ということです。相続人にも大きな利害があるのですが、そもそも相続とは被相続人の財産(相続財産)を相続人に配分するという身分的なプロセスであり、相続は被相続人の本国法によるとされています(法の適用に関する通則法36条)。本国法とは、相続の開始時点において被相続人が国籍を有していた国の法律のことをいいます。日本における相続の場合は、相続は被相続人が亡くなった時に開始されますが(民法882条)、他の国の相続法が本国法である場合は、必ずしもそうとは限らないです。
また、誰が相続人になるか、についても問題点であるといえます。日本の相続法の場合は被相続人の子及び配偶者が第一順位の相続人とされ(民法887条1項、890条)、子がいない場合は、子に代わって被相続人の直系尊属(第二順位)または兄弟姉妹(第三順位)が相続人となります(同法889条1項)。ただし、子に子がいる場合はその子(被相続人の孫)が代襲相続をすることになります(同法887条2項)。相続人も被相続人の本国法によるため、日本の相続法とは異なる取り扱いがなされることがあります(例えばかつてのスペイン法は養子に相続権を与えませんでした)。
何が相続財産になるのか、というのも問題点です。日本において相続財産は、不動産や通帳債権といったプラスの財産(積極財産)のみならず、借金債務といったマイナスの財産(消極財産)も含みます。相続人の問題と同様に、相続財産の範囲も被相続人の本国法に拠ります。また、物権準拠法や契約準拠法、不法行為準拠法など個々の財産に関する準拠法が財産の移転を認めない場合は、その財産は相続財産を構成しないことがあります。具体的には、物権準拠法により、外国人の土地所有が制限されたり、債権準拠法により、当該債権債務が一身専属的とされたりすることが考えられます。相続財産に関しては、相続準拠法のみならず、財産準拠法を参照する必要もあるわけです。
遺言書についても国際相続独自の問題があります。遺言は、その成立・効力はその成立の当時における遺言者(被相続人)の本国法によります(法の適用に関する通則法37条1項)。すなわち、通則法は、遺言の成立、すなわち遺言の意思表示がなされた時点を本国法であると指定しているわけですが、その後遺言者が外国への帰化などにより本国法を変更し、そこで亡くなった場合、遺言準拠法と相続準拠法がズレることになります。この場合には遺言準拠法ではなく、相続準拠法に基づいた遺言の執行によるべきとされています。
このように、大まかには被相続人の本国法によりどの国の法律で相続を行うべきか、が規定されるわけですが、相続準拠法以外にも財産準拠法を参照するなどの必要があります。
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弁護士吉崎 猛Takeshi Yoshizaki
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所属団体等
- 大阪弁護士会所属
- 日本弁護士連合会指定の中小企業の海外展開支援弁護士
- 経営革新等支援機関
- さいたま市産業創造財団、横浜企業経営支援財団ほかのアドバイザー
取扱言語
- 日本語、英語、中国語
著書・論文
- ミャンマー会社法・外国投資関連法※監修、㈱アイキューブ
- 海外派遣者ハンドブック(フィリピン編)※主査、日本在外企業協会
- 中小企業海外展開支援 法務アドバイス※共著、経済法令研究会
- 日インドEPAの原産地規則※ビジネス法務
- 中国ビジネスのための法律入門 中央経済社 他多数
経歴
- 早稲田大学政治経済学部卒業
- ペンシルベニア大学ロースクール(LL.M.)卒業
- 大連外国語学院 長期語学研修課程(中国語)修了
- 2001年 日本国弁護士登録 (54期)
- 2009年 米国カリフォルニア州弁護士登録
- 現在 弁護士法人桜橋総合 代表社員
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