海外の企業や個人と業務委託契約を結ぶ場合のポイントや注意点を解説
海外の企業や個人と契約を結ぶ際には、日本国内とは異なる法制度や商習慣が関わるため、特に慎重な対応が求められます。
本記事では、海外の企業や個人に何らかの業務を委託するときに締結する業務委託契約のポイントや注意点について解説します。
業務委託のメリット
「業務委託」と言っても多種多様の業務を委託することが考えられますが、例えば、現地の事業者に営業・販売業務を委託するのであれば、現地のビジネス事情をよく知っている事業者に営業・販売業務を委ねる方が、自身が現地で営業や販売を行うよりもうまくいく可能性が高いでしょうし、製品の製造業務を委託する場合であれば、受託者の高い技術力を活用できたり、低コストで製品を製造できるといったメリットがあるでしょう。
このようにメリットのある業務委託ではありますが、契約を締結する際は、主に以下の点に注意する必要があります。
契約当事者の特定の必要性
海外の企業や個人と契約を結ぶ際に共通に言えることですが、企業や個人が正しい名称であり、実在しているのかという点は非常に重要です。企業に業務委託するときは、その企業が現地で適法に存続していることの確認が必要ですし、個人に業務委託するときは、氏名が実名であり、住所が現住所であるかなどの確認が必要です。
法的有効性の確認
国や地域によっては、契約書に記載された条項が現地の法律に適合しない場合があります。
たとえば、雇用関係の規制が厳しい国で個人と業務委託契約を締結する場合、業務時間の拘束があり、委託者の指示命令の元で業務を行うなど委託者が受託者の業務遂行を拘束し、管理監督するといった内容である場合、業務委託ではなく事実上の雇用とみなされ、現地の労働法の適用対象になる場合があります。
そのため、現地の法律専門家や弁護士に契約内容を確認してもらうと安心です。
知的財産権の取り決め
業務委託の内容によっては、成果物の知的財産権の取扱いが重要です。
たとえば、IT開発やクリエイティブな制作委託業務などで、受託者が何らかの著作や発明などを行った場合、その成果物に関する著作権や特許権などの知的財産権が誰に帰属するかを明確にしておく必要があります。
機密保持条項の設定
海外の企業や個人と業務委託契約を結ぶ場合、委託者の技術情報や営業秘密を受託者に提供する必要があることもあるため、厳格な機密保持条項を設定することも重要です。
機密保持条項を業務委託契約中に盛り込み、委託者の技術情報や営業秘密が無断で第三者に開示されないようにすることで、競合企業への情報流出リスクを最小限に抑えられます。
委託者による材料、資材やノウハウの提供
委託者が業務委託のための材料や資材、ノウハウを受託者に提供する場合、これらを第三者に横流ししたり、目的外流用をしない厳重な管理を行う規定を定める必要があります。ただし、これらの事項は契約書で定めるだけでは限界もあり、単に技術力や販売力があるというだけでなく、信頼の置ける受託者であるかどうかが重要なカギと言えます。
紛争解決方法の明記
海外の企業や個人と契約を結ぶ際は、紛争が発生した場合の解決方法についても明記しておくことが必要です。
たとえば、契約違反が発生し、当事者間の協議でも解決しなかった場合、どこの国の法律に従って、どこの仲裁機関を利用した仲裁によって解決するのかといった準拠法や仲裁合意の規定を定めるべきです。
万が一トラブルが発生した際の対応がスムーズになり、予想外の法的リスクを回避しやすくなります。
まとめ
今回は海外の企業や個人との業務委託契約を結ぶ場合のポイントや注意点について解説しました。
契約内容の明確化や法的チェック、知的財産権や機密保持の取り決めなどに配慮することで、国際取引のリスクを最小限に抑え、スムーズで信頼性の高いビジネス関係を築けます。
契約が無効になったり法的リスクが発生したりするのを避けるために、弁護士に相談することをおすすめします。
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弁護士吉崎 猛Takeshi Yoshizaki
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当職は主に中小企業の海外取引や海外進出を中心とした様々な法務サポートや、日本で事業展開する外資企業の法務サポートも行っています。
また、海外の専門家とも提携しており、内容・費用ともクライアントに納得頂ける法務サービスの提供を心がけております。
所属団体等
- 大阪弁護士会所属
- 日本弁護士連合会指定の中小企業の海外展開支援弁護士
- 経営革新等支援機関
- さいたま市産業創造財団、横浜企業経営支援財団ほかのアドバイザー
取扱言語
- 日本語、英語、中国語
著書・論文
- ミャンマー会社法・外国投資関連法※監修、㈱アイキューブ
- 海外派遣者ハンドブック(フィリピン編)※主査、日本在外企業協会
- 中小企業海外展開支援 法務アドバイス※共著、経済法令研究会
- 日インドEPAの原産地規則※ビジネス法務
- 中国ビジネスのための法律入門 中央経済社 他多数
経歴
- 早稲田大学政治経済学部卒業
- ペンシルベニア大学ロースクール(LL.M.)卒業
- 大連外国語学院 長期語学研修課程(中国語)修了
- 2001年 日本国弁護士登録 (54期)
- 2009年 米国カリフォルニア州弁護士登録
- 現在 弁護士法人桜橋総合 代表社員
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