販売代理店契約(Distributorship Agreement)について(その1)
海外取引に関する契約のご相談で一番が多いのが、販売代理店契約に関するものです。
従前は日本の商社を通じて海外に輸出してもらっていたが、海外の展示会に出展して海外の販売代理店に自ら製品を売り込むことにした場合もあると思いますし、最初から自社で輸出すべく海外の販売代理店に売り込むことにした場合もあると思います。
日本の商社を通じて海外に輸出してもらう場合は、貴社は商社と国内の製品売買契約を締結しているはずであり、輸出に伴うリスクは商社が取ってくれますし、海外の販売代理店とのやりとりやトラブルの解決も商社が行ってくれるため、自社の海外取引に関するリスクは少ないはずです。ただし、貴社が海外取引に係るリスクを取らない分、輸出実務のノウハウが身につかない、販売代理店や現地での製品についての反応が分かりにくい、商社がマージンを取るため利益も少ないなど貴社にとってデメリットもあるはずです。
自社で海外の販売代理店を見つけて、製品を海外に販売していく場合、自社で製品を輸出しなければならないため、貿易実務を知る必要があります。
その他にも、
海外の販売代理店からの販売代金の支払確保(相手先の信用調査、前払いの徹底、信用状を開設するかなど)
製品保証の対応
現地の規格認証、輸出証明、原産地証明等の取得が必要かどうか
技術系の製品では安全保障のための輸出許可の要否
製造物責任に対する対応(PL保険加入の検討)
海外(販売先国)での商標や特許登録の必要性
など様々な事項を検討した上で、必要に応じて準備する必要があります。
販売代理店契約は、貴社と販売代理店との間の単なる製品の売買や輸出入に関する規定を定めた販売契約ではありません。もちろん、これらの事項も重要な要素ですが、これらの事項だけではなく、海外の販売代理店がどのようなルールに基づいて、販売地域(テリトリー)において貴社の製品を再販売することができるかを貴社と販売代理店との間で定めるものです。
海外の販売代理店が貴社から製品を購入するわけですから、販売代理店は在庫リスクを負担することになりますし、販売代理店は自身の名義と勘定で製品を販売許諾地域(テリトリー)の客先に再販売することになります。
その点では、販売代理店契約は、製品の販売委託契約ではなく、契約内容も販売委託契約とはかなり違ってきます。
例えば、アメリカでは「レップ」(Manufacturer’s Representative)による販売方法が主流ですが、これはアメリカにいる販売受託者が、言わば「営業マン」として貴社(メーカー)の製品をユーザーに売り込んでユーザーから貴社への発注につなげ、その発注に応じた手数料(コミッション)を貴社からもらう商売であり、販売受託者が貴社から製品を購入してユーザーに再販売しているわけではなく、製品の在庫リスクを負っているわけではありません。そうすると、この販売委託、「レップ」による販売方法は、(1)貴社(メーカー)とレップ(販売受託者)との間の販売委託契約と(2)貴社とユーザーとの間の製品販売契約の2つが必要ということになります。
こういった販売方法の違いを意識し、相手方と販売イメージの齟齬が起こらないよう、最初の取引協議のところで、貴社がどのような販売方法で進めていきたいのか、また海外の相手方がどのような販売方法や販売領域を得意としているのか、といったことをよく確認しておく必要があります。
基礎知識Basic knowledge
-
国際取引における契約...
近年では国内取引しか行っていなかった企業でも外国企業との取引を開始し、それに伴い国際取引契約書を作成する機会が […]
-
国際相続とは
国際相続とは文字通り、被相続人・相続人・相続財産・遺言書といった相続に関係する諸要素が国境を跨いで生じる相続の […]
-
国際相続における問題...
国境を超えた人・モノの移動によって生ずる国際相続は、国内にとどまる相続にはない問題点があります。そして、これこ […]
-
相続人の中に外国人や...
遺産相続において相続人に外国人(日本国籍の方が外国籍を取得した場合も含めます)や海外に在住する日本人が含まれる […]
-
包括承継主義と管理清...
債務も含めた被相続人の相続財産をどのようにして相続人に相続させるかという考え方については、包括承継主義と清算管 […]
-
知的財産権の侵害とは...
知的財産権とは、人間の知的創造活動や発明活動によって生み出される無形の財産で、著作権、商標権、特許権、意匠権な […]
よく検索されるキーワードMain Business
弁護士紹介Lawyer
弁護士吉崎 猛Takeshi Yoshizaki
お客様のスケジュール感に合わせ、柔軟かつ迅速にサポートいたします!
昨今の企業活動はもはや日本だけで成り立つものではなく、あらゆる面で海外のことが関わってくるため、日本法や日本語、これまでの日本での商慣習だけで対応することはできません。
当職は主に中小企業の海外取引や海外進出を中心とした様々な法務サポートや、日本で事業展開する外資企業の法務サポートも行っています。
また、海外の専門家とも提携しており、内容・費用ともクライアントに納得頂ける法務サービスの提供を心がけております。
所属団体等
- 大阪弁護士会所属
- 日本弁護士連合会指定の中小企業の海外展開支援弁護士
- 経営革新等支援機関
- さいたま市産業創造財団、横浜企業経営支援財団ほかのアドバイザー
取扱言語
- 日本語、英語、中国語
著書・論文
- ミャンマー会社法・外国投資関連法※監修、㈱アイキューブ
- 海外派遣者ハンドブック(フィリピン編)※主査、日本在外企業協会
- 中小企業海外展開支援 法務アドバイス※共著、経済法令研究会
- 日インドEPAの原産地規則※ビジネス法務
- 中国ビジネスのための法律入門 中央経済社 他多数
経歴
- 早稲田大学政治経済学部卒業
- ペンシルベニア大学ロースクール(LL.M.)卒業
- 大連外国語学院 長期語学研修課程(中国語)修了
- 2001年 日本国弁護士登録 (54期)
- 2009年 米国カリフォルニア州弁護士登録
- 現在 弁護士法人桜橋総合 代表社員
事務所概要Office Overview
名称 | 弁護士法人桜橋総合大阪事務所 |
---|---|
所在地 | 〒530-0047 大阪市北区西天満3-5-10 オフィスポート大阪503 |
TEL/FAX | TEL:06-6362-5105/ FAX:06-6362-5106 |
代表者 | 吉崎 猛(よしざき たけし) |
対応時間 | 平日 9:30~18:00(事前予約で時間外対応可能です) |
定休日 | 土曜・日曜・祝日(事前予約で休日も対応可能です) |
対応エリア | 全国対応しています。お気軽にご依頼ください。 |