M&Aで用いられる基本合意書(MOU)とは?記載事項や注意点など
■はじめに
M&A、すなわち企業合併・買収は、事業承継や新たな事業や市場への参入等様々な目的を実現するために広く行われています。
M&Aは、合併、会社分割、事業譲渡、株式譲渡等、当事者のニーズに合わせてスキームを選択する余地がありますが、いずれにしても、当事者を探すところから実際にM&Aの効力が生じるクロージングまで、多くの時間を要します。
その間に、デューデリジェンス、最終的な契約の締結、クロージング等のプロセスを踏んでいくことになりますが、こういったプロセスを進めていくに当たり基本合意書(MOU)が交わされることが一般的です。
このページでは、基本合意書(MOU)とは何か、記載事項や注意点についてご紹介します。
■基本合意書(MOU)とは
基本合意書とは、企業合併・買収を進めていく旨の当事者の意向が合致した場合に作成される書面で、合併・買収の基本条件やスケジュールについて、当事者間で確認するために締結されるものです。
基本合意書の作成は、合併・買収の開始段階や途中段階で当事者双方の合意を明確にして整理することで、デューデリジェンスや合併・買収条件の交渉を円滑に進めることを目的としています。
■基本合意書(MOU)の記載事項
では、基本合意書にはどのような内容が記載されるのでしょうか。
代表的なものは以下の通りとなります。
・スキームの概要
上述のように、M&Aには、合併、会社分割、事業譲渡、株式譲渡等複数のスキームが考えられ、それぞれ法的効果が異なります。どのような方法で合併・買収を行うかは当事者のニーズの実現に関わる重要な事項となっているため、基本合意書の時点で定められます。
・譲渡対象と価格
譲渡の対象は会社の事業や株式の一部ということもあれば、それら全体ということもあります。譲渡の対象や範囲を明確にすることと、買収価格も合意することもあります。ただし、これらの内容はデューデリジェンスを行う以前の合意であったりすることもあり、変更の余地も残しておくことが一般的です。
・表明保証事項
表明保証とは、一定の事項について保証することをいい、これに反する事実が判明した場合、損害賠償や買収価格の減額、契約の解除が行われることがあります。
表明保証の対象としては、財務状況が適正であることや、契約違反や訴訟などにより重大な債務を負っていないこと、給料の未払いの不存在、税金や社会保険料の未滞納、知的財産の侵害の不存在等が挙げられます。
・独占交渉権の付与
独占交渉権とは、売却側がほかの買収候補者と交渉したり情報を開示したりすることを禁止することをいいます。
・秘密保持義務の設定
特にデューデリジェンスのように、相手方の詳細な情報を取得する前には秘密保持義務を設定して損害を生じさせないようにすることが重要となります。
・最終契約締結の時期
独占交渉権との関係で、最終契約を締結する期限について事前に合意しておくことが考えられます。期限を過ぎても最終契約を締結できなければ、独占交渉権は解消され、他の買収候補者と協議が開始することができるようにするためです。
■基本合意書(MOU)の注意点
まず、基本合意書に記載されている事項の中には、法的拘束力のあるものとないものがあります。
法的拘束力を有する事項は特に、注意して作成することが求められます。
例えば、独占交渉権の付与や秘密保持義務には法的拘束力を持たせることが一般的です。
そのため、独占交渉権を付与する期間や秘密保持義務の対象となる事項の範囲など、当事者の利益が相反する事項については、紛争を避けるためにも明確に定めておく必要があります。
このように、基本合意書は、企業合併・買収の目的や状況に応じて臨機応変に作成することが求められます。
■さいごに
以上のようにM&Aの基本合意書(MOU)の作成に際してはもちろんのこと、M&Aの全過程を通じて専門的な知識が必要となります。
そのため、弁護士など専門家に相談することが好ましい場合も少なくありません。
弁護士 吉崎 猛(弁護士法人桜橋総合)はM&Aに関するご相談を受け付けております。大阪・関西地方を中心に、東北、関東、東海、北陸、中国、四国、九州地方まで幅広い地域のお客様から依頼を承っております。
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弁護士吉崎 猛Takeshi Yoshizaki
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昨今の企業活動はもはや日本だけで成り立つものではなく、あらゆる面で海外のことが関わってくるため、日本法や日本語、これまでの日本での商慣習だけで対応することはできません。
当職は主に中小企業の海外取引や海外進出を中心とした様々な法務サポートや、日本で事業展開する外資企業の法務サポートも行っています。
また、海外の専門家とも提携しており、内容・費用ともクライアントに納得頂ける法務サービスの提供を心がけております。
所属団体等
- 大阪弁護士会所属
- 日本弁護士連合会指定の中小企業の海外展開支援弁護士
- 経営革新等支援機関
- さいたま市産業創造財団、横浜企業経営支援財団ほかのアドバイザー
取扱言語
- 日本語、英語、中国語
著書・論文
- ミャンマー会社法・外国投資関連法※監修、㈱アイキューブ
- 海外派遣者ハンドブック(フィリピン編)※主査、日本在外企業協会
- 中小企業海外展開支援 法務アドバイス※共著、経済法令研究会
- 日インドEPAの原産地規則※ビジネス法務
- 中国ビジネスのための法律入門 中央経済社 他多数
経歴
- 早稲田大学政治経済学部卒業
- ペンシルベニア大学ロースクール(LL.M.)卒業
- 大連外国語学院 長期語学研修課程(中国語)修了
- 2001年 日本国弁護士登録 (54期)
- 2009年 米国カリフォルニア州弁護士登録
- 現在 弁護士法人桜橋総合 代表社員
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